オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

涙を止めるより先に、私は嗤う。


「……最低でしょ?こんなオンナ…」


佐々くんは黙ったまま動かない。


ひとりぼっちが寂しくて、誰かにそばにいてほしくて、相手の気持ちを利用した。

その罪悪感に、好きなヒトなんだと、思い込みたかっただけ。

セックス?

できるわけないじゃん!

相手の好意のむこうにある性欲に、私はいつも嫌悪してたのに!

キスでさえ、たまらなくイヤなのにっ!!

なのに、被害者ぶって、傷ついて……



「なんで好きなんていうのよっ!!」



自分さえよけりゃ、他の誰が傷ついたってかまやしないっ、

今この場面でさえ、藤堂さんとの誤解を否定もしないで、別れ話に利用する。


こんなオンナ、大っキライッ!!

こんなっ……


「こんな、最っ低のオンナ……!好きになるようなオトコ、わたしはっ、絶対にっ、好きになったりなんかしないっ!!!!」


グイッ!!


瞬間、息が止まった。

私の胸ぐらをつかんだまま、威圧的に佐々くんが見下ろしてる。



「……だったら丁度いいんじゃねえ?…どうせ好きなオトコとはしたくねんだろ?」



その表情に、涙も止まる。


――この顔…知ってる。


“私と、エッチしませんか?”


そう、佐々くんに声かけたとき、


『いいよ?』


…って、笑ったときの顔だ……


佐々くんは私の腕をつかむと無言で歩きだした。

振りほどくどころか、絡まる足を、こけないように動かすのだけで精一杯。

お構いなしにどんどん歩く、佐々くんの背中……を、

ただ……

呆然と見つめる……

すると、突然聞き慣れない携帯の着信音が耳に響いた。


「……成久?…」


――成…久……?


「ああ、捕まえた…心配いらねぇよ……神崎にも言っとけ」


記憶の隅っこで誰かの声が響く。


『菅原は?菅原成久…』


そうだ、籐堂さんから聞いた名前……


な……んで?

なんで佐々くんが、その名前、知ってんの?

どおゆうコト?


頭の中がグチャグチャで、考えがまとまらない。


ドサッ!!


乱暴に放り投げられたホテルの一室。

背中に硬いスプリングがあたると、一度だけカラダが跳ねた。

惰性のままベッドに仰向けになり、見上げた天井……


――ブルー……
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