オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

出るつもりは、これっぽっちもなかったが、このままじゃ花美が目を覚ます。


――ったく…、誰だよ、こんな時に……


ベッドサイドに手を伸ばすけど、スマホが見当たらない。

部屋の中は、真っ暗闇じゃないとはいえ、探し物するには厳しい。

そうこうしてるうちに音が消えたから、諦めたかと思ったのに、

また、すぐに鳴り始めた。


「……ん、ぅう~……」

「……まだ寝てな」


髪の毛にキスして、そっと腕を引き抜く。

音のするほうへ向かいながら、

そういや、来てすぐに投げ捨てたんだと思い出して、

部屋の隅で、脱ぎ捨てた服の下に埋もれたスマホを掘り起こした。

ディスプレイには、


「……成久、てめぇ…後で覚えてろよ…」

『……あ~、悪い。マジ、謝る。佐々、実は……』


その先は、ひどい雑音だった。


「……何だ?……聞こえねんだけど」


ガザガサと擦れるみたいな音に混じって、成久が誰かと言い争ってる。

声からして……


――オンナ?


『花美を出してっ!!』

「なんだ、剣菱優香かよ」


つい、声に出た。

咄嗟に振り返り、花美を見る。

スヤスヤ眠ってる姿に、安心する。


『花美はっ!?そこにいるんでしょっ!!』

「……」

『出しなさい!!』


スピーカー並みの大声が、耳にあてなくても響いてきやがる。

しかも、相変わらずの上から目線。


『早く出しなさいよっ!』

「……うるせぇな」


花美を起さないように、低く唸った。

それなのに、


「……ささ…くん……?」


花美が目を覚ます。

声が漏れないようにスマホを押えて、愛しい声に振り向いた。
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