オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

なにがどおなってるのか、よくわからないケド、

2人がパパとママの知り合いだってことを、ハナシの流れから無理やり理解した。


「まあ…そうだなぁ、返す前に逝っちまったからな……」


司さんは私を気遣うように見つめると、何かを思い出すように、瞳を閉じる。



「“剣菱”がさあ、このコを横取りしようとしてて、迷惑してんのよ……」


――…え?


反射的にカラダが強張る。

お母サマは真っ直ぐと司さんを見据えたまま、私を抱きしめる手を決して緩めない。


知ってる……

知ってるんだ、お母サマ。

私が“剣菱”だって……


「まあ、伊都が守るだろうけど…、司もさ、新(アラタ)に借りを返すいいチャンスなんじゃないかと思って」

「…そりゃ、ご親切にどうも」

「“剣菱”が相手だからね、信用できる協力者はできるだけ多いほうがいい」

「なるほど…」


そう、ポツリ…と、つぶやいて、

司さんは再び目を開いた。

目の前にあるものではない、何かを見つめながら、司さんはゆっくりとその視線を天井に向け、一点を睨み付ける。


「……アラタ」


パパのことを、そう呼ぶ人を、私はママしか知らない。

だから、驚いた。

私が“剣菱”だってことを、知られていたという事実より、

それよりも、今、目の前にいるこの2人の存在に目を見張る。


初めて会った、

昔の、パパとママを知っている人……


「そうだなぁ、ここらでひとつ、おじさんもがんばってみるか…」


司さんは、そうつぶやくと、

ニカッ…っと、人懐っこい笑顔を私に向けた。


「花美ちゃん!腹へってねぇか?何か作ってやるよ。どおせ、メシ食いに来たんだろう?なあ!ディアナ!」

「その、“ディアナ”っての、やめろって言ってるでしょ…、まったく、どいつもこいつも、いつのハナシしてるんだか…」

「花美チャン、気を付けな?このおばさん、超怖ぇえから。昔はここら辺の族の連中で知らない奴はいなくって…」

「司っ!!」

「マジきれいだったぞ?あんたの母さん…、アサヒさんとディアナが並んで立つとなあ、その姿を拝みに、その日の族は走るルートが変わるんだよ」


ココロの奥から、何かが込み上げる。

佐々くんに、抱きしめられたトキにも感じた、

何重にも鍵をかけて、封印していた感情が決壊する感覚……


「…ママは暴走族だったの?」

「正確には違うなぁ、それはディアナの方だ。アサヒさんはお姫サマだよ。族のシンボルとかマスコット的な……」


司さんの、言葉が詰まる。


「じゃあパパは?パパは暴走族の人だったの?そこで、ママと出会ったのかなぁ?」


お母サマも司さんも、驚いたように私を見つめてるけど、もう止まらなかった。

涙が頬を伝う。

涙も、言葉も…溢れだす。
< 217 / 229 >

この作品をシェア

pagetop