オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)

「ママがね、教えてくれたの。ママが中学1年生の時にパパと会ったんだって、ママは中学生の時からお姫様だったの?」

「パパは最初はめちゃくちゃ嫌われてたってホント?無理やりママのことさらって来ちゃったんだって、ホントかなぁ?」

「花美…ちゃん……」


お母サマが、心配そうに私の肩を抱き寄せる。


違うの、悲しいんじゃないの。

うれしいの。

うれしくて、涙が止まらないだけ。


パパとママのお葬式は、突然現れた名前も知らない弁護士が取り仕切った。

参列者の誰ひとりいない式が、ほんの20分足らずで終了すると、

パパとママの存在は、この世からあっという間に消えてなくなってしまった。

何事もなかったかのように、私の世界はまわり出す。

最初から、2人なんかいなかったような感覚。

その時初めて気づいた。


パパとママが、どんなにひっそりと、静かに、隠れるように暮らしていたのか……


理由は、“剣菱”に関係しているのだろうと、漠然と想像するだけ。

教えてくれる人はいない。


「だって、ママがパパのことキライだったなんてウソみたいでしょ?すごく仲良いところしか知らないの、私…」

「知らないの……何も…」

「…花美ちゃん……」

「だから、教えてくださいっ…」


生活の痕跡を残したまま、片づけられないリビング。

家族でとった写真。

確かにパパとママがいたのだと確認するように、自分の記憶を必死で守った。

そのくせ、思い出すたびに、ココロから血が流れるの。

苦しくて……

ひとりで思い出すたびに、ココロが死んでいくようだった……


「パパと、ママは、幸せでしたか…?」



言い切るのと同時に、その答えを聞く間もなく大声で泣いた。

最近の私は、泣いてばかりだ。

お母サマは、私が泣き止むまでずっと抱きしめて、頭を撫でてくいてくれた。

しばらくすると、なんだかいい匂いがしてきてお腹が空いてきたことに気づく。

私ってば、ゲンキンなヤツ。


「さてと、じゃあ一緒に昔話でもしながら、食うか!」


司さんの作ったパスタとサラダが並べられたテーブルは、懐かしい家族の食卓を思い出させたけど、

ココロは凍えるどころか、ポカポカと、春の陽だまりの中にいるように暖かかった。
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