嘘つきお嬢様は、愛を希う
風汰に幹部を任せた当時、そんな話をサラッと話してくれたことがあった。
俺の兄も幹部だったんだ、と珍しく自分の話を語る風汰は嬉しそうな反面どこか寂しそうにも見えた。
玲汰さんは風汰が幹部になってからほんの一、二度ここに来たものの、ほとんど顔を見せることはなかったから再会するのも久々なのかもしれない。
特に玲汰さんの方はいつもと変わらないような気がするけれど、風汰は未だに兄に対しての接し方が上手く掴めないようだった。
比較的器用で何事もこなしてしまうにも関わらず、兄に対しての対応だけは傍から見ていてもド下手くそだ。
その点、なんだかんだとありつつもしっかり『姉弟』をしていた桐乃と天馬は……案外、このふたりの良い手本になるんじゃないだろうか。
「……まあ、親睦はまた改めてってことで。そもそも俺はようやく帰ってきたーってとこなんだけど、これは出動命令なんだよね? いま何やら大変なことが起きてるんでしょ?」
こっちはこっちで相変わらずちゃらんぽらんな雰囲気を醸し出している唯織さんは、俺たちの間に入るように立って笑った。