嘘つきお嬢様は、愛を希う
……この男は……だめだ。
直感的にそう捉えた瞬間、極度の緊張からか心臓が激しく波打ちはじめる。
「申し訳ないことをしてしまったね。君のことはしっかり客人として扱うように言っておいたんだけど、どうも伝達が上手くいってなかったらしい」
「……な、なんで客人……? あなた華鋼の人でしょ? 華鋼は女子どもにも容赦しないって聞いたけど」
「うん、でも君はそれ以前に椿財閥のご令嬢だろう?」
ビクッと肩が跳ねた。
思わず体の痛みも忘れて起き上がり、這いずるように男から距離をとる。
「椿財閥は日本屈指の大企業だからね。その気になればたかが暴走族くらい指ひとつで消滅できる。……まあ普通なら、それほどの財閥が全国に幾多もある暴走族にいちいち関与したりはしないだろうけれど」
困ったものだね。
そう微笑みながら、男は私を抱き起こして壁に寄りかからせるように座らせた。