嘘つきお嬢様は、愛を希う


「そもそも君の弟くんが胡蝶蘭に入った時から厄介だなぁとは思っていたんだよ。胡蝶蘭の最大の敵組織は紛れもなく華鋼だもの。君のお父上が何かをきっかけにうちを滅ぼそうとしたら一環の終わりだからね」


「っ……あの人はそんなこと、しない」


「弟くんに関しては、だろう? 君は違う」



この男はいったい何者なんだろう。


カマをかけられているのか、確信があるからそう言うのかはわからない。


けれど、私が何を言わなくてもこいつは全てを知っているような気がして、底知れぬ恐怖が胸を覆い尽くす。



「……紹介が遅れたな。ボクは華鋼の現総長。名前は矢倉柾木。覚えなくていいよ」


「っ、総長……」



覚えなくていいならなんで名乗ったんだろう、この男。

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