嘘つきお嬢様は、愛を希う


「恐らく君のお父上は今日中に君が拉致されている情報を掴んで、こちらを潰す計画を立てるだろう。そうなればうちにはどうにも出来ない。規模が違いすぎる」


「……じゃ、じゃあ、なんで私をさらったの?」



そこまで分かっているのに、こうして強行手段に出た理由はなに?



「それはね、お姫さま」



グイッと強い力で顎を掴まれ引き寄せられる。



「胡蝶蘭が心底目障りだからだよ」



温度のない氷点下の瞳がこちらを見下ろした。


全身に強い重力を浴びているような言いようのない恐怖が押し寄せて、もう声も出ない。

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