嘘つきお嬢様は、愛を希う


けれど誰も不容易に近づけないのは、ヤツが『何をするか分からない』からだ。


華鋼の総長に流れる黒い噂は一つや二つじゃない。



「ボクらは君たちが来るのをボクらで楽しーく待っていただけさ。まあ使えない下っ端くんたちが全然足止めしてくれないから、ちょっとばかり痛い目みてもらったけれど」


「っ……テメェ……! 桐姉に何しやがったっ!!」


「何と言われても……見ての通りさ」



桐乃の顔色は青いを通り越してもはや白に近い。


生きているのかさえ不安になるほどぴくりともしない桐乃に、みな焦りが募っていく。



「ふふ、いいねその顔。ボクはそういう顔が見たかったんだよ。君たちが絶望に染まる顔」


「……それが一組織の頭に立つ人間の言葉かよ」


「どうでもいいもの、華鋼なんて」



当たり前だろう、と矢倉が小馬鹿にしたように鼻で笑う。

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