暴君と魔女




「・・・・・体が冷えてしまいます。・・・・お食事も、まともにしていないのでは?」


「・・・・お前と出会う前ほどではないぞ」


「でも、一緒にいた時ほど食べてもいらっしゃらないのですね」




呆れたと言いたげなのに微笑む姿。


ああ、変わらないな。と額をそっと寄せてみる。




「やはり、・・・・私がお傍にいないと何もできないお坊ちゃんですね望様は・・・・・」


「・・・・・四季・・・」




濁すなよ・・・・。


はっきり・・・、言え。


そんな事を視線で向けて四季のグレーを沈み込むように見つめた。





「私がお傍でお世話いたします。・・・・一生・・・」



「遅いんだよ・・・・馬鹿女」




言い終わると同時に触れて重なった唇。


この空気に冷やされて酷く冷たいのに酷く熱い。


啄んで絡んで深まって。


自分の手が四季の頭にそっと回った瞬間に響く泣き声。


パッと唇を離し同時に視線を落とせば、ぐずって泣きだす子供の姿。


お互いに苦笑いで顔を見合わせ、すぐに腕を伸ばすと四季の手から優しく受け取る。


軽いのに重い存在に湧く感情。


愛おしくて熱い。


抱いて宥めれば眠かっただけなのかすぐに泣きやむその姿。




「・・・・・そう言えば、名前を聞いていないんだが?」




今更な事に気がつき四季を見つめれば、フッと笑った彼女が子供の頭を撫でながらその名を告げる。




「一琉(いちる)です」


「・・・・一琉・・か」


「・・・・望様、・・・・とりあえず、戻りましょうか?パンケーキも焼いて差し上げなくては」


「・・・・またそれか」



本気でない嫌味を口にすれば、クスリと笑いその手を腕に絡め隣に並ぶ四季。


その意図を探って見つめ返せば躊躇いながらその答えを口にする。




「・・・っ・・あの、・・・少し、理想でした」


「・・・理想?」


「この公園を・・・・こうして親子で歩くのが」



そう言って羞恥で顔を赤らめる四季に呆気に取られ、そして自分も何だか気恥ずかしくなる。


それでも誤魔化すように舌打ちを響かせると。




「馬鹿女、これからいつだって出来る事だろ」




言い放ち視線も移さずに歩き出すと、俺の本心を理解している四季がクスクス笑う。





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