海くんがわたしを好きだなんてそんなことあるわけない。
わたしはたった0.1秒だけだったけど、海くんは足を止めて3秒くらい止まってしまった。
そしてハッとしたように
「あ、い、今のは、はぐれないでねって意味、だから、」
「う、うん!わかってるよ!!海くん、そこに立ち止まっちゃ危ないかもっ」
「あ、そ、そうだね。じゃあ行こうか」
海くんはたやすく人混みの中へと進んでいく。
わたしも必死に自分より背の高い人たちをかき分ける。
もうすぐソフトクリームのお店に着くのに、海くんのミルクティー色の髪の毛が人ひとり分先に見えて、はぐれてしまいそうになる。
わたしは思わず手を伸ばして隙間から見えるカーキのコートの袖をつかんだ。
海くんは「えっ」と声を漏らしやっとわたしのほうを向いてくれた。