【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「ねぇ、何読んでんのー?」


休み時間、俺が自分の席で雪菜から借りた本を読んでいたら、目の前にひょっこりと誰かが現れた。


その声ですぐにわかる。


「あぁ、美空(みく)か」


見上げるとそこには、ミルクティー色の髪の毛を綺麗にくるくると巻き、バッチリ化粧をした小柄な女の子の姿が。


彼女の名前は鈴森(すずもり)美空。俺の幼なじみで、小学校からの付き合いだ。


偶然にも高校までずっと一緒で、家も近いから、なんというか、友達というよりも、兄妹に近い感じだ。


今も同じクラスだから、何かとよく話すし、一緒につるむことが多い。


「これ、『虹の丘』っていう本だよ。友達に借りたんだけど、面白いんだよ」


「え~っ、なにその真面目そうな本。っていうか、彼方が読書してるとか、なんかキモい。どうしちゃったの、前は漫画しか読まなかったくせに」


「おいっ、キモいってなんだよ!」


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