【完】キミさえいれば、なにもいらない。
それはおそらく、陸斗先輩が私には語らなかった、彼の本音だった。


結局私が彼に振られた理由、相手にされなかった本当の理由は、それだった。


妹みたいだからとか、そういうことじゃなくて。


私が真面目過ぎてつまらないから。私が甘え下手で可愛げがないから。


だから彼は急にそっけなくなったんだ。


『マジかー』


『それにほら、ウブすぎると下手に手出せないじゃん。友達の妹だしさ』


そう言ってゲラゲラと笑う、陸斗先輩はなんだか別人みたいで。


私が知る彼と、同一人物だとは思えなかった。


でもたぶん、それが彼の本性だったんだろう。


私は結局先輩の優しい一面に騙されていただけだった。


先輩は、私のことを好きなんかじゃなかった。


もてあそんで、その気にさせて、飽きた途端にさよならして。


そして実際は、私のことを陰でバカにしていた。


私のことを否定していたんだ。


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