【完】キミさえいれば、なにもいらない。
だけど、次の瞬間聞こえてきたその名前にハッとして、私は足を止めた。


エミリ……。


あれ?その名前、どこかで聞いたことがあるような。


ふと、この前お兄ちゃんがうちに女の子を連れてきたときのことを思い出す。


たしか、あの女の子、似たような名前じゃなかったかな……。


「はぁっ?エミリ?ちょっと待てよ。俺なんかしたっけ?っていうか、エミリって誰?」


一ノ瀬くんが不思議そうな顔で聞き返すと、そのいかつい男は顔を真っ赤にして、勢いよく彼のことを突き飛ばす。


「うわっ!!」


ドサッと地面に尻もちをつく一ノ瀬くん。


そして男はますます怒り狂った様子で、大声で怒鳴り散らしはじめて。


「お前なぁっ!とぼけんじゃねぇぞ!!エミリが言ってたんだよ!M高の〝イチノセハルカ〟って奴に遊ばれて捨てられたってな!!」


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