黒犬
案外長がいない漣でも何事もなく月日は経っていく
愛兎さん退院まであと1週間
俺は紗智栞さんと退院後のパーティーの企画をしていた
愛兎さんの弟夫婦も来ていた
ふふっ
小さな布団で寝る小さな命
じっと見つめる
「食べないでよ。」
愛兎さんに似たでもどこか違う男
「食べねえよ。」
苛々して声が荒くなった
あ。
ハッとして赤ん坊を見る。
ヘヘっ
笑っていた。
奥からこちらを見る男の子
征一か…
手招きをして見るが逃げてしまった
話に参加する
俺は男を迎えに行く係らしい
ーバリーン
ガラスの割れる音
皆に緊張が走った
走りそこに着く
割れたガラス
窓…
倒れた少年
「征一…
征一……。」
気を失っているだけだ
傷はない
天堂さんと外へ出た
誰もいない
怪しい気配もなかった
「戻ろう。」
男と戻った
〜〜〜
〜SIDE 愛兎
連絡が入った
叶から
漣に銃弾が撃ち込まれた
窓ガラスが割れただけ
怪我人はいない
だが…
ーブチッ
管を引き抜いて廊下を歩く
腹はまだ痛い
「おい、」
後ろから老医の声がした
「今無茶したら傷が開いて死ぬ。
もうあの少年からも血はもらえない。
覚悟はできてるのか?」
私はその医者を睨みつけた
「……。
私は、どうしたらいい。」
病院という箱は人を弱くする
弱音を吐くのはいつぶりだろうが
ぁあ、確か……
ふふっ
思い出したら笑えて来た
「何かが起きたわけじゃねえ。
何かあったらすぐ出られるように今は寝てろ。
それにその体じゃ戦えねえ。
できても指示を出すだけだ。」
この医者の言うことはいつも正しい
何者だろうか…
こいつは…
「お前柔らかくなったよな…」
老医が呟いた
私は無視した
。