冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「でも……好きじゃないんでしょ?」

 彼が月にいい思い出がないのは知っている。つらい記憶を蘇らせるのは不本意だ。

「今はそうでもない」

 さらりと否定されライラは思わず目を見開く。ゆるやかにスヴェンの整った顔が寄せられ、とっさに目を閉じると左瞼に口づけが落とされた。

 続けて彼女の瞳が姿を現したとき、今度は躊躇いなくライラは両目でまっすぐにスヴェンを見据えた。

「初めて」

 ぽつりと呟かれたが、スヴェンには意味が理解できない。泣きそうになるのを我慢しライラは笑った。

「伯母さんの前で以外、初めて。瞳を気にせずにいられるの」

 感情が昂ってなにかが溢れそうになる。込み上げる気持ちを唇をぎゅっと結んで耐えた。

「ありがとう、スヴェン」

「礼はいらないから、このままおとなしくしてろ」

 慣れとでもいうのか、あんなに緊張していたのに、いつのまにかこの体勢と温もりがライラには心地よくなっていた。スヴェンはどうなのだろうか。

「でも、眠くなってきちゃった」

「寝ればいいだろ」

「スヴェンに寝てほしかったのに……。今日の話もまだ……」

 言いながらライラの瞼は徐々に重たくなってくる。声も上手く出せない。

「明日、聞くからもう休め」

 スヴェンは器用に自分たちにシーツをかける。安心してライラが目を閉じると、再び瞼に温もりを感じた。

「ちゃんと……寝てね」

 返事はなかったが、唇になにかが触れた。その正体を確認する間もなくライラは夢の中に落ちていった。
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