冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「スヴェン」

 声をかけた相手はゆるやかに視線を寄越した。不安げな色を瞳に宿したライラは小さく尋ねる。

「今日は遅くなる?」

「とくにその予定はない。お前の話も聞かないとならないしな」

 冷たい言い方だが、ライラの顔はぱっと明るくなる。

「うん。でも無理はしなくていいからね」

 笑顔を見せマーシャとその場を去っていく。スヴェンはどこか呆れた面持ちでライラたちを見送った。そして、さっきから隣で視線を送ってくる男を見遣る。

「なんだ?」

「いや、べつに」

 ルディガーはどこか楽しそうだ。比例してスヴェンの顔には嫌悪が混じる。

「バルシュハイト元帥」

 そこに割って入ったのはエリオットだ。恐れ多さからか、遠慮がちにスヴェンに続ける。

「あの、彼女の幼馴染みとして言わせてください。ライラは無鉄砲なところもありますが、いつも人のために一生懸命なんです。至らない点もあるかもしれませんが、どうか」

「わかってる」

 エリオットの精一杯のフォローをスヴェンは遮って答えた。差し出がましかったかと、エリオットの体に緊張が走る。

「あいつが……妻が仕事の邪魔をして悪かったな」

「い、いえ」

 思わぬ労いにエリオットは虚を衝かれた。

 あまり感情が乗せられていない声ではあるが、なんとなくアードラーとしてではなく、発言も相まってプライベートな雰囲気で返され、安心したのも事実だ。

 ふたりに改めて敬意を払い、エリオットは仕事を再開させた。
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