冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「私の運命の人!」

 意外な回答にスヴェンは目を丸くした。対照的にライラはおむもろに目を閉じる。

「フューリエンとか瞳の色とか関係なく、私自身を見て好きになってくれる人を探すの。私ね、誰かの特別になりたい!」

 そして、改めて穏やかな顔でスヴェンと目を合わせた。薄暗い部屋でも互いの表情ははっきりとわかる。

「こんな前向きな決断ができるのはスヴェンのおかげだよ。私、ずっと人と深く関わるのを避けていた。うしろばっかり振り向いて諦めてた。でもスヴェン言ったでしょ? 『いいことも悪いことも全部背負って前に進んでいく』って」

 スヴェンは軽く息を吐くと、ライラの髪をゆるやかに搔き上げる。

「意気込むのはいいが、俺に宣言する内容じゃないな」

 呆れた表情と声に、ライラはしばし発言を後悔する。

 自分には関係ないとでも言いたいのか。それとも形だけとはいえ結婚している相手に言うのは不適切だとたしなめられたのか。

 スヴェンの言いたい意味を自分なりに後者寄りに解釈した。

「えっと。スヴェンだから言ったの。他の人の前では気をつけるよ。ちゃんとあなたと結婚しているって意識して発言も行動もするから」

 うっかり口を滑らせたわけではなく、わかっていると言いたくてライラは説明する。けれどスヴェンは軽く鼻を鳴らした。

「よく言う。俺よりも先に違う男にあれこれ相談しているんだろ」

 間髪を入れずに返され、エリオットの件だと認識する。そしてライラは今度こそ慌て始めた。

 スヴェンは実情を知っているし、先ほどライラを信用するという対応だった。だからスヴェンの不機嫌さの理由が、ライラにはいまいち理解できない。
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