冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
日が沈み、洋灯の中の蝋燭の火が柔らかい光を放ち廊下を照らしている。自分の宛がわれた部屋からさほど遠くない目的地へライラはひっそりとやってきた。

 ゆるやかに城の中を闇が覆っている。

 夕食と湯浴みを済ませ、ライラの髪はやや湿り気を帯びていた。用意された夜着は肩紐付きの膝下まである白いシルクタイプのもので肌に心地いい。

 さすがにこの格好で部屋から出るのは躊躇われたので、頭も覆えるローブを羽織って出てきた。くすんだ赤茶の煉瓦色から修道士を彷彿とさせる。

 誰に会うわけでもなく無事に辿りついたが、ライラは部屋の前で葛藤していた。思い切ってノックしてみようと思うのに、なかなか行動に移せない。

 とはいえ、いつまでもこうしているわけにもいかない。意を決して手を上げると、叩く前にドアが開けられた。

 顔を覗かせたのは部屋の主であるスヴェンで来訪者に驚きもせず、ライラを見下ろしている。団服ではなく、白いシャツに黒いズボンとラフな格好だった。

 彼の髪もやや湿っているのを見ると、休息中だったのかもしれない。不意打ちを突かれたのは逆にライラの方だった。

「あの……」

「ドアの前で気配を感じたからな。なんの用だ?」

 あっさり種明かしをされ、ライラは感心する前に決めていた言葉を告げようとした。

「昼間の件を改めて謝ろうと思ったんです。私……」

「謝らなくていい」

 力強く遮られ、ライラの肩が反射的に震える。踵を返そうとしたところでスヴェンがそれを止めた。
< 37 / 212 >

この作品をシェア

pagetop