冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「とにかく中に入れ」

 予想を裏切る展開にライラはとっさの反応に困る。断る考えも一瞬、過ぎった。けれどすぐに打ち消して部屋の主に向き直る。

「失礼します」

 ライラはスヴェンの自室に足を踏み入れた。その地位に見合うべく部屋は広さもあり立派な造りだった。ライラの使用している客室とは違い派手さはないが、やや大きめの本棚に来客対応も可能な机とソファが置かれている。

「適当に座れ」

「はい」

 立ちすくんでいるライラを見かねてスヴェンが声をかけた。緊張しながらもライラはソファに浅く腰掛ける。

 勢いで部屋に入ってしまったものの、なにを話せばいいのか。

「手は、大丈夫ですか?」

「たいしたことはない」

 無難に選んで振った話題は、相手の隙のない返事で続きそうにもない。心臓がどくどくと打ちつけるのから意識をはずし、ライラはぎこちなくも言い訳めいたものを話し始めた。

「私、幼い頃に両親を病気で亡くしていて……。孤児院でも病はもちろん、ささいな怪我から感染症を起こして亡くなる仲間もいました。だから、病気や怪我にはつい過剰に反応してしまうんです」

 孤児院にいる子どもたちでシスターの指示の元、薬草や野菜などを育てた。それを売ってお金にしたりもしたが生活はいつも綱渡りの状態で、当然体調を崩しても十分な医療行為も受けられない。

 自分よりも幼い子どもが亡くなるのをライラは何度も目の当たりにしてきた。
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