この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
頭が真っ白になり、なにも考えられない。

稔が私のことを好きだったなんてまったく気づいていなかったし、男の子として意識したことはなかったので、すぐに答えを出すことができない。

でも、こんなに追いつめられている彼を拒否なんてできる? 
私が断ったら彼はどうなるの?


そんなことを頭の中で考えながら、稔を見つめる。

だけどすぐに決められない。


「ちょっと考えてもいい?」
「もちろん」


彼は柔らかな笑みを浮かべる。

私がそばにいれば、少しは穏やかにすごせるんだろうか。


それから10分。
稔が自分の病気について知ったという衝撃と、突然の告白の驚きを胸に抱えながら、ただ彼の手を握っていた。

学校であったことを話そうと思ってきたのに、病気について知り『もうすぐ死ぬんだね』なんてつらすぎる言葉を吐き出す彼を前に、そんな話ができるわけない。

そして稔も私の手を握りしめたまま黙っていた。
< 86 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop