この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
私は困った。

稔に告白された瞬間、別の人の顔が頭に浮かんだからだ。

一階で待っている、俊介の顔が。


「あっ、あの……」
「里穂、頼む」


顔をゆがめ懇願してくる稔にイヤだなんて言えない。

だけど私は……。私が好きなのは……。

答えられないでいると、彼は表情を曇らせる。


「ごめん。もうすぐ死ぬヤツなんかと付き合えないよね」
「違う!」


そんなことでためらっているわけじゃない。


「ただ、私なんかでいいのかなって……」


私は手に汗をかくのを感じながら、嘘をついた。


どうしたらいいの? 
俊介が好きなのに。彼の前で稔と付き合ったりできる?


「いいに決まってる。里穂はずっと俺の好きな人なんだ。里穂がいたから、陸上だって頑張ってこられた。これからだって……。いつまで生きられるかわからないけど、里穂と一緒なら、つらいことも耐えられる気がするんだ」
「稔……」
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