たった7日間で恋人になる方法
バスロータリーを出て、駅までの案内板を見ながら進むと、循環バスが走る大通りには出ずに、通りの手前を左に曲がり、駅まで続いている細い路地裏の商店街に出る。
この時間になると、ほとんどのお店は閉まっていて、開いているのは通り沿いにあるコンビニと、小さなスナックや居酒屋店。
この天候のせいか、人通りも少なくやけに静かで、周りの静けさに呼応するように、いつしか会話が途切れ始め、駅に近づくほどに寡黙になっていく。
『…いよいよ明日か…』
不意に拓真君が呟いた。
『緊張してるの?』
『少しな…何て言うか、テスト前の緊張みたいな感じかなぁ』
『一週間の総まとめ的な?』
『フッ…そうそう』
静かに返事を落として、また会話が途切れてしまう。
少し疲れたのかもしれない。
今日は半日連れまわして、しかも私の為にずっと演技をし続けてくれたのだろうから、それも当然で、本当に申し訳なく思う。
しばらく互いに無言のまま歩き、あまりの静寂に、店の前を通った時に開くドアの向こうから、賑やかな喧騒が聞こえるだけで、ホッとした。
そういえば、こうして並んで歩いているのに、何故か歩きずらくないのは、拓真君が私の歩調に合わせてくれているからなのだと、今更ながらに気づく。
…拓真君の恋人になる人は、きっと幸せなんだろうな。
素直にそう思うと、自分はやっぱり嫉妬しているのかもしれないと、認めざるを得ない。
拓真君が想いを寄せているという、その男性に…。