たった7日間で恋人になる方法


ピーッ


不意に目の前のコピー機が、印刷の仕上がりを教える甲高い電子音を発し、我に返る。

いけない…仕事中だった。

やっと出来上がった成果物をトレイから取り出し、印刷に問題はないか確認するも、たった今交わされた二人の会話が気になって、集中できない。


”杉崎専務は何のために拓真君を?…しかも、時間外ではなく、今呼び出す必要って…”


『これは、ちょっとマズいかもね』
『美園』

いつのまにか、すぐそばに立っていた美園が、小声で話しかけてきた。

彼女もちょうど休憩中だったようで、二人の会話が聞こえたらしい。

『普通うちらみたいな末端な社員を、専務が直々に呼ぶとか、ありえないでしょ』

さっきから胸の奥に燻り始めた、漠然とした不安の原因を、いとも簡単に口にする。

この一年もの間、専務との日中のすべてのやりとりは、誰にも悟られないよう社内メールでしかしていなかったっと言っていた。

組織のトップに近い存在の杉崎専務と、一番低く離れた場所にいる雑用専門社員の拓真君。

その接点は、本来限りなくゼロのはずで、こんな風に呼び出すなんて、周囲が怪しまないわけがない。

これでは、拓真君の素性がバレてしまうリスクが、高すぎる。
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