たった7日間で恋人になる方法
11.たった7日間で恋人になる方法


午後 16:00


他課と違って、ほとんど外回りがない総務課は、この時間帯になると他部署の人間が戻ってくるので、業務上の手続や問い合わせ等で、課内は少し騒がしくなる。

かくいう私も、さっき戻ってきた設計部門の営業担当から、急遽イベント用のチラシの追加を頼まれ、発注している時間がないために、最近課内に導入された最新のカラーコピー機と奮闘中。

『あれ?菊田さん、時枝さんどこ行ったか知りませんか?』

ちょうどコピー機の直ぐ近くにあるブレイクゾーンから出てきた菊田さんに、香織ちゃんが声をかけているのが聞こえ、意識がそちらに向かう。

『会計から時枝さんのハンコが、押されていないとこがあるらしくって』

今はもうだたの同僚であるはずの名に、つい反応してしまい、何気なく彼の席を見るも、確かに姿が見えない。

『奴なら、上行った』
『上?』
『杉崎専務んとこだ』
『えっ、なんで時枝さんが杉崎専務のとこなんかに?』
『俺に聞くなよ、専務から直々に呼び出されたんだとよ』

二人の会話の中に出てきた”杉崎専務”の名に手が止まり、続けて”呼び出された”というキーワードに、ギクリとする。

『すぐ戻って来ますよね??私、ハンコ一つで残業とか嫌ですよぉ』
『知るか、そんなこと時枝本人に聞けよな』

詰め寄る香織ちゃんに、菊田さんが不機嫌そうにそう言い放つと、未だ腑に落ちない彼女は、頼まれたらしき書類を手に、ふくれながらも自身のデスクに戻っていく。
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