たった7日間で恋人になる方法

『大丈夫?』
『うん…でもやっぱり、高いのね』

できるだけ、そっちを見ないように、パネル盤の方を見ながら、笑顔を見せようとするけれど、さすがにうまく笑えない。

きっと拓真君がいなかったら、この狭いエレベーター、遮るものも無く、否が応にも視界の中に必ず入ってしまっていた。

『…もし、怖かったら、僕のスーツの裾を掴んで良いから』
『え?』
『あ…もちろん、嫌じゃなかったらだけど』

自分のすぐ隣に立ち、私からガラス面が見えないようにしてくれている拓真君が、真顔でそんなことを言うから、思わず噴き出してしまう。

『な、何だよ』
『だって、”嫌じゃなかったら…”なんて言うから』
『そこ笑うとこじゃないだろ』

少し拗ねるような拓真君が、また可笑しくて、一瞬怖さも忘れて笑ってしまう。

苦手な”女性”に対して、精一杯の努力だったのかもしれない。

自分が、ゲーム中で仮想恋愛した相手は、いつも少し強引なくらいの男性で、女性にいちいち許可を求めてから行動を起こすなんて、なんだかカッコ悪いと思ってた。

琉星みたいな、スマートさは無いけれど、そのぶっきらぼうな優しさにほっこりする。

”チン”

あっという間に、11階に着き、閉まった時同様に、ゆっくりと扉が開いた。
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