たった7日間で恋人になる方法

『出て右側は見ない方がいい。壁一面ガラス張りで、高層のパノラマが広がってるからね』

拓真君が言ったように、エレベーターを出てすぐのホールは、2階のそれと違って広々と開放的な空間になっていて、その一面が一枚ガラスで埋まっているようだった。

『専務室は、こっち』

そのパノラマが見えないように、また後ろ手に廻って、隠すように誘導してくれる。

ホールを出ると、すぐ右に曲がり、広い廊下に出た。

通常の階と違って、足元はすべてに萌葱色の重厚な絨毯が敷かれ、左右にはいくつかの扉と、その間には高そうな絵画が飾られてる。

『専務室はこの突き当りを左に曲がった先、部屋の入り口にプレートあるし…わかるよね』
『うん…』
『何?』
『ううん、何だかいろいろ知ってるんだね?拓真君…去年入ったばかりなのに、私より詳しいから、驚いた』
『あ…まぁ、仕事で…いろいろ知ることもあるし…』

仕事?…拓真君の仕事は、確か消耗品の発注管理がメインで、この階に用事があるような仕事では無さそうだけど。

『それじゃ、僕も仕事に戻るよ』
『うん、ホントありがとうね、助かちゃった』
『じゃ』

軽く手を上げ、今来た道を去ろうとして、すぐ立ち止まり、何かを思い出したように振り返る。
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