たった7日間で恋人になる方法
気持ちを切り替えようと注文した、少し苦みのあるカンパリソーダを口にしていると、カウンターの内側から、さっきこの席に案内してくださった男性(お店のマスターらしい)が、伊勢エビの乗った見るからに豪華な魚介のパスタを、運んできた。
『こちら、お店からのサービスです』
『良いんですか?』
『時枝様は、お店にとって、大切なお客様ですから』
ネオンテトラの水槽の前で、大人の男性特有の落ち着いた笑みで答えるマスターは、白いワイシャツに濃紺のベスト、短めの髪は飲食店らしくキチンの整えられている。
後ろを振り返り、当の本人である拓真君を見れば、まだ先ほどの男性と談笑していて、戻ってくる気配はない。
『よろしければ、お取り分けさせていただいても?』
『あ、はい…お願いします』
『かしこまりました』
にっこりと微笑まれると、完全にイケメンの部類に入るであろうマスター自ら、器用な手さばきで、二枚の皿に取り分けていく。
さっき見たメニューには書かれていなかったところをみると、このパスタは裏メニューというものなのかもしれない。
伊勢エビだけじゃなく豪華な具材が目を引き、思わず魅入ってしまう。
『それにしても…今夜は驚きました』
マスターが手を動かしながら、口を開く。
『驚く?』
『はい…なにせ時枝様が、女性をお連れになったのは、おそらく”初めて”…でしたので』
『そうなんですか?』
『先ほども申し上げましたように、時枝様はこの店の開店当初から毎週のようにいらしてくださるお得意様ですが、毎度ほとんどお一人ですし、お連れ様がいらっしゃること自体が非常に稀ですから…』