みだらな天使
「奏ちゃん、しっかり着いてきてね!」



「は、はい。」




言われなくても、着いていくしかない。




だって、周りの人たちが…




芸能人、大物政治家などなど…




テレビや雑誌で見る人たちばかり。




ますます自分がこの場に相応しくない人間だと痛感させられる。





はあ…とため息をつきながら前を見ると…






「あ…れ?七海さん…?龍さん…?」





しまった…




二人を見失っちゃった。




こんな広い会場に、一人きり。





こんなにたくさんの人がいる中で、どうしてこうも孤独を感じるのだろう。




その場に立ち止まると、そんなことが脳裏をよぎった。






そして、ぼーっと立ち止まっていたからか、腕を組んで歩いていたカップルとぶつかってしまい…





「きゃっ…」




ハイヒールのバランスを崩し転びかけたところを、サッと抱きとめられた。






「あ、すみませ…」





謝りながら相手の顔を見上げると…






「え……か…なで…?」




会いたくて会いたくてたまらなかった、朔だった。


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