みだらな天使
「まさか、行ってきますのチューがいつもより熱くて〜、とか言わないわよね?さすがの朔もそんなバカップルみたいなこと………って、図星?」
まさか、七海さんにズバリ当てられるとは思わなくて、私の顔に出てしまったのだろう。
バックミラー越しに私の顔を見た七海さんに、驚いた後、大爆笑された。
…は、恥ずかしい。
穴があったら入りたいとは、まさにこのような状況を指すのだろう。
あまりの恥ずかしさに手で顔を覆っていると、いつの間にかマンションに到着していた。
そして、七海さんが呟いた。
「ありがとね、奏ちゃん。そうやっていつまでも、朔を見ててあげてね…。」
「え…あ、はい…。」
「よーし、到着!さて、奏ちゃんの肩借りていい?二人で大の男を担ぐよ〜!」
以前、一瞬だけ見たことのある、朔の寂しそうな表情。
全く同じ表情を、七海さんが今…。
過去に何か…あったのかな。