だから何ですか?Ⅱ【Memory】
気がつけば俺の方のシャンプーは終えていて、亜豆の手を静かに掴むと湯船へ引き込む。
それと入れ替わる様に身を上げて、さっきの亜豆の様に縁に座り亜豆の買った新しいシャンプーを手に取った。
俺の開いた足の間の浴槽の縁に寄りかかった亜豆が、お願いします。とばかりに見上げて長い髪が腹部に触れる。
既に乾き始めていた髪を湿らせて、手の平に伸ばしたシャンプーを柔らかく髪に乗せ泡立て始めた。
「・・・簡単に好きは止められないって言われたよ」
「・・・・」
「すげぇ・・・まっすぐに、直向きに、・・・少し・・・亜豆に似てるって思った」
「それは、危険ですね。誰かさんは私が大好きですから」
「フハッ、だろう?で、俺も思わずそんな小田が『好きだ』って思って、そのまま本人にも言っちまった」
「問題発言ですね」
それまで俺に身を預け自分の爪を見たり、飛んだ泡に指を伸ばしていた亜豆の意識が見事集中。
何を浮気してるんだと言いたげに見上げて絡んできた視線だけども亜豆に対しては怯む心も後ろめたさもない。