だから何ですか?Ⅱ【Memory】
亜豆効果覿面というのか。
あの休憩タイムの後は驚くほど普通に仕事に取り掛かれたと思う。
立ち止まっていても仕方ないし、逆境があるからこそ成長もする物だ。
そんな事を前向きに思え、他の仕事に没頭できた残りの勤務時間。
うっかり没頭しすぎて『もう少し』なんて残業願望が顔をのぞかせていたけれど、さすがに押し込んででも優先させたいプライベートが控えていたわけで。
きっかりの定時。
早めに作業を切り上げ保存をかけてPCを落とす。
身の回りの整理をして上着を羽織っていれば、いつもは定時に上がる事がない俺を知っている仲間内からは『えっ?帰るの?』なんて突っ込まれるほど。
俺の印象ってどこまでも『仕事馬鹿?』なんて苦笑いでフロアを抜けて、まっすぐにエレベーターに向かえば丁度下に行くそれが扉を開いていて急いで駆け込む。
そうか、定時だとエレベーターもこんなに混むのか。なんて今更な事を再確認し、誰かから香る香水の匂いに酔いそうだと目を細める。
それでも、そんな時間も僅かな物。
さしたる時間もかからずゆっくりと下りきったエレベーターがその扉を開いて、開けたエントランスに身を進めるとそこも帰路につく人間で溢れている。