だから何ですか?Ⅱ【Memory】
さっきからどうも堂々巡りに恋人主張をされて、自信喪失とまでは言わずともやはり不安も僅かに浮上していた。
しかも、もう一人の当事者の亜豆の反応も窺えず、ただ一人で悶々としていたから余計に。
それでも今やっと亜豆の口から『別れている』という言葉が響いて緊張が緩んだ気がする。
つまりは軍配が上がるのは俺な筈。
この修羅場にもやっとケリがつくだろうと、今度は強気全面に苛立つ笑顔に挑んで視線を移したのに。
「別れた。・・・ねぇ」
どことなく含みのある口調と声音と・・・まったく消える事のない緩い笑みと。
ここまで来るとこの笑顔がこいつの標準な素顔なんじゃなかろうかとも思ってしまう。
それでも、やはり俺が含みに感じたそれは亜豆からしても意識を引き戻されるものであったらしい。
亜豆が非難目的で背けていた視線が静かに男に戻った瞬間、その時を見計らっていたように男の両手が亜豆の頬を包み込む。
あっ、と思った時には亜豆の額に男の額が寄って、至近距離で見つめ合った2人を捉えた直後。
「別れたっけ?」
「・・・・・・・・・えっ?」
予想外の一言が絶えず弧を浮かべる口から落とされて、亜豆と俺に戸惑いと言う波紋を大きく広げて言葉を奪った。