だから何ですか?Ⅱ【Memory】





「い・・伊万里さん、・・・」


「・・・・」


「ちょっ・・・」


「・・・・」


「・・・どこに・・」


「・・・・」



止まることなく追っても来てない存在から逃げるように進めた歩み。


そんな間に度々亜豆の声が俺に投げかけられているのは気がついていたのに応える余裕もなかった。


とにかく今は立ち止まりたくない。


離れて離れて遠ざかって、遠ざけて。


これ以上何も持っていかれたくない。


何よりも・・・・手に掴んでいる存在を持っていかれたくはない。


そんな一心のみで身体は突き動かされ、そこにプラスされたのは自分がどこよりも緊張を解けて安全だと思える場所。


帰巣働き、人の欲求である筈の食欲なんかはまるで投げ捨て住み慣れたマンションに身を投じる。


エレベーターを待った?それともすんなり乗った?


どちらにしてもその空間に収まっていた時間の記憶さえ苛立ちと焦りに塗り替えられている。


その中に時々浮上するのは亜豆があいつに口づけられた場面で、エレベーターの到着音と舌打ちはほぼ同時。


開き始めた扉から余裕なく足早に降りると自室の前に向かい取り出していた鍵をさしこんだ。




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