だから何ですか?Ⅱ【Memory】
薄暗い空間からは冷気の出迎え。
でも負の感情で火照った肌にはむしろ心地よく、馴染んだ生活空間の匂いには張り詰めすぎた警戒心が解けて安堵する。
安堵はするけれど。
「っ・・・ざけんなっ、」
ようやく開いた口から小さくも零れ落ちたのはここまでの帰路に溜め込んだ憎悪の響き。
その言葉を浴びせる対象者は不在であって、結局は自分の身に戻って苛立ちが増すだけなのに。
まさにその効果あってか、口にした直後に身を返しようやく亜豆に意識働き手を伸ばしかけた。
乱暴にドアに押し付け、噛み付く様に口付けて、強姦さながらにそこで事に及んで。
と、そんな流れが行われたのは脳内のみで、実際は・・・、
「頭庇って、」
「あっ?・・っ______」
伸ばしかけた手の指先が掠りもしない間に、悲鳴でも待ったの言葉でもないその響きが変に鎮静効果をもたらせ見事怪訝に静止する。
だけども直後に遠慮なく勢いのまま突き飛ばされて、バランス崩し玄関続きの廊下に後ろ向きに倒れた。
忠告のおかげ?
『庇って』と頭に残っていた言葉の効果か、尻や背中は程々に打つも頭は打たず。
それでも、一瞬は起きた事に呆け直後には意識が追いつき眉根が寄った。