だから何ですか?Ⅱ【Memory】




そんな俺にも、・・・いや、どんな俺にもいつだって怯まずまっすぐに向けられる視線はどこまでも濁らず淀みがない。


頬に触れている体温さえ力加減さえ俺の心を鎮静させて、その心の静寂の間を待っていたかのように、



「伊万里さんがいいんです」


「・・・・・」


「イケメンだとか、そんなのどうでもよくて。・・・伊万里さんが伊万里さんである事が私にとって何よりも重要なんです」


「・・・・」


「ヘタレだろうが、格好悪い時があっても・・・それが伊万里さんならいいんです」


「・・・亜豆、」


「あっ・・・あとは、」



ここに来て躊躇いを見せた言葉の間。


同時に表情も躊躇いを見せるけれどその含みに不安な要素は皆無。


感じるのは羞恥と言える類の躊躇いだろう。


それを肯定する様に響く声音は力なくも糖度高くこちらに作用する。



「私を・・・好きでいてくれる伊万里さんなら」



嗚呼、とろりとろり・・・、

まずは聴覚。



「・・・私には、誰よりも勝る。・・・ミケなんて足元にも及ばない」



次いで触れ合った額から触覚。



「・・・・好きです」



暗くとも明確に分かる紅潮と、もどかしくも色めいた表情の亜豆に視覚も陥落。


分かって。と遠慮がちに強請る様に啄ばんできた唇が・・・息が甘い。



「・・・お前って、」


「・・・はい、」


「狡い、」



惚れた弱みなんて誰が作った名言だ?


先に惚れて、自分の方が惚れ込んでいるなんて豪語している亜豆なのにまったく弱みなんて見つからない。


ああ、でも・・・悲しいかな俺にはぴったりと当てはまる名言だ。


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