だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「伊万里さん、」
「・・・ん?」
「初めて・・・人を好きになる事が【初恋】なら、」
「うん、」
「初めて、人から本気で好きになられた事はなんて言うんでしょうかね」
「・・・・・なんて・・言うんだろうな」
何とも言えない沈黙の静寂を破るように、静かに俺の名を呼んだ亜豆の声が大きく聞こえた。
そうして続けられた亜豆の疑問には一瞬頭を働かせるも答えが浮かばなかった。
むしろ、そんな事を考えた事もなかった。
亜豆は・・・時々簡単そうに見えて難しい質問をしてくる。
思いもしないような感性を音のつぶてにされて、見事対応しきれず返答に迷っていればようやく動きを見せ大きな双眸で見つめ上げてきた姿。
ああ、無垢な子供のそれに類似する。
「・・・やっぱり・・・初恋と言う響きがしっくりきますかね?」
「今までの価値観を捨てて幅広く見れば・・・まぁ、その響きでもいいのかもな」
「じゃあ・・・ミケは私の初恋してくれた人」
「『私に』じゃなくて?」
「『私に』だとミケが初恋した事になるでしょう?さすがにミケの初恋は私じゃないと思いますよ。アレでいて伊万里さんより一個上ですよミケ」
「えっ・・・、マジで年上!?てっきり亜豆とどっこいくらいかと思ってた。・・・うわぁ、なんか・・複雑」
俺が28だからあいつは29?
てっきり年下だと思っていたから変なショックを受けて口元を覆い、複雑な苦笑を浮かべて『あ~』っと抑揚のない声を響かせる。