だから何ですか?Ⅱ【Memory】
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「じゃあ、気を付けて」
本気で心配しているような口調でそんな一言を告げてくる姿には思わず小さく笑って振り返り見つめ返す。
別に外にまで見送りに来なくてもいいというのに、わざわざ寒さの増した夜空の下に下って、呼びつけたタクシーに乗り込む私を見送る彼にはジワリと歓喜の熱が込み上げる。
「気を付けるも何もタクシーですよ?」
「タクシーから降りて家に入るまでがあるだろうが」
「過保護な」
「昨今の犯罪者は恐いんだぞ?いつ何時思ってもみないタイミングに襲われるか分からねぇだろ」
「分かりました。充分に気を付けて部屋に入ったらがっちり戸締りしますから」
こんな会話すらも只々ひたすらに楽しく幸せな瞬間。
それでも、さすがにいつまでもこうしていてはキリがないと、タクシーに乗り込むことで終幕とする。
自動で扉がバタンと閉って、窓越しに捉える彼が片手をあげるのに軽く手を振り返すと、ほどなくして車が静かに発車した。
タクシーというのはどの車に乗っても同じ特有の匂いがする。
そんな事を思いながら時折耳に入る無線の音をBGMの様に聞き入れ窓の外に視線は固定。