だから何ですか?Ⅱ【Memory】
車の振動と言うのはどうしてこうも眠りを誘うのか。
いや、理由はそれだけでなくつい先ほどと言える時間まで快楽に沈められていたことも原因の一つであろう。
まだ記憶にも肌にも鮮明に残る伊万里さんの余韻を思いだし意識してしまえば身体が火照る。
怖いくらいに幸せだ。
ずっと好きで好きで追いかけていた人に、好かれて求められて抱き締められて。
あの伊万里さんが私に惚れ込み夢中になってくれているのだ。
そんな奇跡までは望んでいなかった。
永遠の片想いでも、傍で見ているだけでも、充分に幸せな事で満たされていたというのに。
今では言葉を交わさなければ落ち着かない、ほんの少しでも触れなければ満足しない。
ううん、違う、抱き締められたくて、息が苦しくなるくらいキスされたいし、訳が分からなくなるほど抱きつぶされたい。
私を貪欲に求める伊万里さんを見上げる瞬間が言いようもないくらいに恍惚と幸せで。
なんて・・・貪欲になってしまったものか。
呆れた物だと音は漏らさず自分に失笑して、そんな思考の間にも指示通りに道を進めた車はあっさりと自宅の前にたどり着く。
『いい』といったのに渡されたタクシー代で料金を払い、カツンとヒールを響かせその身を外気に晒し始めると空気の冷たさに息が白く立ち上った。