だから何ですか?Ⅱ【Memory】
雰囲気のある被写体。
そんな感覚で彼を認識していたのだと思う。
うっかり意識を惹かれて見つめていたけれど、現実に引き戻す様に耳に入りこんだ車のエンジン音。
背後の道路を走り抜けた車にビクリと身を縮こまらせ、さらに遠くから人の気配を感じ始めれば更に体が強張ってしまう。
畏怖と言うのとは違う気がする。
それでも、緊張より強く、畏怖までは及ばない様な。
とにかく落ち着かず不安になるのだ。
ソワソワと落ち着かない心と体。
視線すら定まらずに至る所を捉えて、彼の顔を捉えたのだってその通過点に過ぎない筈だった。
なのにピタリと定まったのは私の姿を煙草を吹かしながらまっすぐに見下ろしている視線とぶつかったから。
多分私の視線と絡んでいるかは向こうからしたら定かでないとは思う。
それでも私はしっかりと髪の隙間から凝らした視線が対峙しているのを感じている。
ふと思う・・・。
彼から見えている私は一体どんな生き物なのかと。
まっすぐに見つめてくるその目には他の人の様な嫌悪はまず見えない。
厄介だとか面倒だとかそんな感情も見えないのだ。
偽善者の目は・・・・・嫌って程見てきたから分かる。
この人の目はそういう感じはしない。