だから何ですか?Ⅱ【Memory】
当然、そんな俺の耳に響く・・・
「・・・伊万里さん?」
彼女の疑問に満ちた、戸惑いに満ちた声音。
それと同時にコツコツといつもより間隔短く響いて降りてくるヒールの音。
いい。
やめろ。・・・来るな。
そんな事すら思うのに音には出来ず、そのまま駆けおりてきた亜豆の手が俺に伸びてそっと腕に添えられた。
落としている視界に敢えて入り込むように覗かせてきたのは、本気で俺の異変に心配するような表情で。
まっすぐ揺れることなく見つめ上げてくる双眸は亜豆らしいと愛おしく思ったのに、追って視界に入った首元の絆創膏がその感覚を打ち消した。
負の感情に弾かれた。
一瞬で理性的な自分は掻き消されて、感情のまま亜豆の肩を掴むとそのまま壁に押し付ける。
どこかデジャブを感じる。
海音との誤解の時も感情的に亜豆を責めこんだんだ。
それでも今回はあの時よりもさらに感情的で乱暴で。
ドンッとぶつかった衝撃と驚愕に満ちた亜豆の表情に罪悪感を抱くより早く、首元の絆創膏を勢いよく雑に剥ぎ取った。
「痛っ__・・・」
「・・・・・・・・ほらな・・」
「・・・・・いまりさ」
「馬鹿は・・・・いつだって俺なんだ」
馬鹿すぎて・・・力も抜ける。
乾いた笑いを自分に響かせ、ずるりと亜豆の肩に頭を預けるとビクリと怯えた様な反応を感じてまた笑いたくなる。
本当は泣きたい感情を乾いた笑いに置き換えて、視界に捉える痛々しい傷痕に追い打ちをかけられた。