だから何ですか?Ⅱ【Memory】




ポケットに入れっぱなしのカメラを服の上から触れては『何を考えているのか』と我に返ってその意識を手放して。


手に持っていたおにぎりを食べきると、さっきもらった水で喉を潤し一息。


フゥーっと吐きだしたのは満たされたような息だ。


空腹も満たした、喉も潤した、そうして見上げた空もなかなかの晴天で、さびれた公園には人の気配もない。


・・・いや、訂正。


彼以外人の気配がない。


それでもここまでくれば最早彼は特例の存在感になっていて、緊張なんて物はさすがに浮上しない。


それに・・・・こんな日の射す下に身を置くのは久しぶりだ。


晴天の青が身に優しく染み込みそうで、肌に触れる空気が肌寒い朝方とは違って徐々に春の温かみを与えてくれる。


やわく吹く風に鬱蒼と伸びきっている木々だってなかなか心地のいい音をざわめかして・・・気持ちがいい。


穏やかな感覚に安堵を覚えて椅子の背もたれに身を預ける。


春の陽気もまだそこまで最大限ではないだろうに、ウトウトと睡魔に襲われたのは睡眠不足と満腹中枢が満たされたからか。


それでもさすがにこんなところで眠るのはどうなんだ?


それこそ都会舐めるな!というオチになりかねないと必死に抗うものの降りてくる目蓋と重くなる体は欲求に素直だ。



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