だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「っ__い、・・おいっ、」
何?・・・煩いな。
「おーい、起きろって、」
まだ、眠いんだって。放っておいてよ。
「・・・・マジか。っ・・・あ~・・・マジか・・」
何焦って落ち込んでるか分からないけど、私なんか放っていっていいから。
不意に揺さぶられ声をかけられされた体で、ほんの僅か沈んでいた意識の覚醒。
それでも少しだけ反応したに過ぎず、睡魔に捕われたまま『煩い』とぼんやり思いながら自分を起こした人間を確認しただけ。
映り込む姿は見覚えあれど馴染むほどではない男の姿。
誰?なんて思うものの答えを打ち出すほど目が覚めていたわけじゃない。
結局睡魔の勝ち。
ふるふると震わせながら開いていた目蓋を閉じた瞬間に、全てを諦めたような重苦しい彼の溜め息を聞き入れたのが最後。
そのまま睡魔に身を預けてどれほどか。
睡魔も私を捉え遊ぶのに飽きたらしく、その手を離せばゆっくりと浮上していく意識。
まずは聴覚に入り込むザワザワという木々の音。
肌に触れる温かい日差しと頬を擽る春の風。
ここまでは心地がいいと言えたのに自分が寝そべっているものの堅さは決して良好と言えず、ピクリと眉を動かしながらようやく目蓋を開いて光を取り込み始めた。