だから何ですか?Ⅱ【Memory】
真っ先に視界に捉えたのは・・・・、
何これ?
一瞬判断がつかずにそのまま呆けて目の前の布地を見つめてしまう。
確かめる様にそろりと指先で摘まめば、
「お、やっと起きたか」
そんな声が降ってきた事で瞬時に睡魔に襲われる直前の記憶が回帰する。
声が落ちてきた方を見上げれば、かなり近くに自分を見下ろす姿があって硬直した。
心の中では『ぎゃー』っと大絶叫しての放心状態で、視界に捉えたのは彼のスーツの生地。
つまりはこうだ。
眠った時はベンチで座った状態であったのに、目覚めてみれば何故か彼の膝枕で顔を腹部に向けて眠っていたわけだ。
そうして見上げた姿は何やら手に持っていた書類らしきものを大判の封筒にガサリと仕舞い込んで横に置き、腕時計で時間を確認しながら、
「よく寝てたなぁ。・・・もう11時前だ、」
そんな言葉と一緒に自分の腕時計を示して私に見せて軽く笑ってくる姿。
ああ、笑ってる顔は初めてかもしれない。なんて真っ先にそちらに意識が走るも。
・・・・・11時?
もうそんな!?
と、正常に頭が働けば勢いよく身を起こして意味もなく周りを見渡してしまう。
相変わらず代わり映えのしない無人の公園。
それでも街中は活性化しているのがわかる雑音は遠くから響く。
自分がどんな時間を刻もうが社会はまともに変わらない時を刻んでいる。