だから何ですか?Ⅱ【Memory】

俺の感じ取り方がおかしくなっているのだろうか?


でも、どうしてもこの誘拐劇に悪質な感覚は見えてこない。


それでもそれはあくまでも俺の感覚に過ぎなくて確信はない。


でも・・・亜豆が今も信用を置いていた。



「亜豆は・・・確かな物しか受け入れない。それを信じてるから警察沙汰にする気がなかった。だから・・・大道寺さんを頼ったんです」


「・・・・・」


「亜豆が・・・あなたを【友達】だと言ったから」


「・・・・・」


「それを信じて正解でした」



さっきの言葉で分かった。


彼の方も亜豆を友人だと認識している。


それを亜豆に言ったらどんな反応をするんだろうな。


『だから、友達だって言ったじゃないですか』なんて、何を言っているんだという様な反応かもな。


そんな亜豆の姿を思い浮かべてしまえば無性に恋しい。


リアルに戻るように時間を確認すれば指定の2時間まで30分ちょっとか。



「東駅前」


「えっ、」


「そこの帝都のセミスイートだよ。フロントで【大道寺】の名前だしたら通してもらえるようにしておいたから」


「ありがとうございます」


頭を下げて、くるりと扉に体を向けた瞬間。



「あいつに【借り】はまだかって言っといて」



背中に投げかけられた伝言には軽くデジャブを感じて小さく笑ってしまった。


確かクリスマスの時もそんな言葉を亜豆に投げていた。


その詳細はよく知らないけれど、



「言っておきます」



僅かに振り返りそう告げると今度は引き止められることもなく部屋を後にした。


それにしても・・・。


あのワインといい、これも充分に亜豆に対して奉仕しているような事なのに。


亜豆に作った【借り】って何なんだろう?


そんな疑問も程々に、意識を切り替えると寒空の下ゲームの制限を気にしながらゴールへと急いだ。



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