だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「・・・・・やっぱり・・・伊万里には勝てない」
「・・・えっ?」
「リオが自ら貪欲に相手の反応や気持ちを欲しがってるんだもん」
「・・・・」
「与えられる分で満足だって言うんじゃなく、足りないってすり寄って懐いて気を引こうとしてるんだもん」
「あっ・・・」
「なんか、今のこの瞬間にストンと負けが落ちてきた気がする」
参った。
そんな苦笑を私に見せて優しく頬を撫でてくるミケに危険性や妖しさなんて皆無だ。
『可愛い』なんてドロドロに甘さを乗せた声音が今にも振ってきそうな柔らかい表情と手の感触と。
そのまま静かに寄った顔の距離には珍しく羞恥が働き心臓が今更な動悸を強める。
そんな緊張の変化ははっきりと自分の姿に現れていたらしく、僅かに開いた口の隙間からフッと笑う様な息遣いが零れた直後。
「何、今更俺に緊張してるの?」
「い、いやぁ・・・なんかイケメンがいるなって」
「フフッ、今更気がついた?そんなイケメンをサラッと振ったんだよ?リオは」
「私の永遠ダントツな心のイケメンは伊万里さんだから」
「・・・・念押しされるとムカつくね。ムカついたから襲っとこう」
「っ・・・!?」
あっ、一瞬で水色に危険色が混ざりこんだ。
ほんの一瞬前には波風立たぬ静かな水色の湖をその目に連想していた程だったのに。