だから何ですか?Ⅱ【Memory】
「っ・・・ん・・・」
「ダメ。・・・綺麗で美味しそうな唇なんだから噛まないで」
唇を掠めながら囁き落とすような声音にはさらにジリっと体の奥の燃焼が増した気がする。
その熱によって発生した熱い息を体外に出そうとするのに重なってきた唇に阻まれ逆に熱を注ぎこまれる。
勿論、すんなりと受け入れているわけじゃない。
顔を背けようと必死であるのに大きな手にしっかりと顎を抑えられての強引なキス。
唇を割って入り込もうとしてきた舌先には警告の様に程々の力で噛みついて、さすがにその刺激には顔を離したミケが『痛い』と舌を覗かせながらクスクスと笑って細めた目で私を見下ろした。
「ダメじゃん?しっかり想像しないと気持ちよくなれないよ?」
「ならない!なりたくないっての!!」
「何で?気持ち良い事好きじゃない、リオ」
そうでしょ?と問う様な笑みで腹部の中央を上から下へなぞる様な指の動きには息を止めて目をキツク閉じて。
熱い。
嫌だ、気持ちいいとか焦れったいとか思いたくない。
このどんどん熱くなる身体も腹立たしい。
感じたくないという意思に反して都合の悪い事に私の身体を知り尽くしている男は熱の上げ所を知っている。
これが本当に見ず知らずの他人であるなら、微塵も情を通わせたことのないどこまでも嫌悪できる相手であったならどれだけマシな拒絶が出来るのか。
さっきの噛みつきだってそうだ。
嫌だと思った事に偽りはない。
本気で嫌で、離れろと反撃したのに本気での攻撃は出来ずに脅すに収まった力加減。
ミケに本気の嫌悪なんて抱けるはずがない。
そしてそんな自分がただひたすらに首を絞めにきているような現状。
「また・・・伊万里を重ねていいよ。開き直っての今はそれに対して苦しむ感覚もないしね。むしろ・・・伊万里を想像した途端に感度が抜群に増すリオの身体は気持ち良いから」
『嫌だ____』
嫌だ、嫌だ、嫌だ___。
『想像して』と言われたってもう出来ない。
想像が出来たのは本当のそれを知らなかったから。
今はもう伊万里さんの抱き方を知っている。
息の乱し方を、愛で方を、貪り方を。
貪欲で鋭い捕食者の目を。
触れ方も声も何もかもが違うのに想像して被せて溺れ切るなんて出来る筈がない。
『何で俺以外に触られんのが嫌じゃないんだよっ!?』
嫌です・・・。
凄く凄く・・・嫌。