だから何ですか?Ⅱ【Memory】
あ、あれ?
あけても・・・平気?
なに?えっと・・・えっ?
なんて、困惑気味にそろりそろり目蓋の力を抜いて目の前の光景を視覚に取り込んでいけば。
・・・・一時停止?
そんな事を思ってしまう様な静止した状況が映り込んで数秒。
私が危惧したように伊万里さんの振りかざした拳はまっすぐにミケに向かって振り切られていた。
いや、振り切る直前と言うのか。
まるでリモコンのスイッチを押したかのようにミケの顔面直前でピタリと止まっている拳。
その表情もまだ鋭いままでミケを見据え、それに対峙するミケはミケで何とも言えない複雑な苦笑で伊万里さんを見つめ返している。
不意に訪れた静の間というのか。
さっきまでの荒ぶり返した空気が嘘のようにシンッと落ち着いたその場に真っ先に音を響かせたのは。
「・・・何で・・・振り切らないかなぁ?」
フッと力なく笑い、自分の目の前でとまった拳にチラリと視線を走らせるミケ。
どうして?と指先で拳をツンツンと突いて、そんな刺激が静止解除であったかのように静かに手を下ろした伊万里さんが一息。
「力の使いどころは見極めろ」
「・・・はっ?」
「俺に武道叩き込んだ祖父さんの教えでね。むやみやたら感情的に鍛錬して得た力を使うなって言われてんだよ」
今は使うべきところじゃなかった。と言うように、拳を作っていた手をひらひらと振って冷静にミケを見下ろす伊万里さんは恐ろしくカッコいいと思ってしまった。