だから何ですか?Ⅱ【Memory】
ほんの一瞬の静寂だったんだろう。
その静寂が耳に痛いと感じ始めた頃合いに、ようやく動きを見せたのは探るようにミケを見つめ下ろしていた伊万里さんで。
『はぁぁぁっ』とあからさまな溜め息を響かせ、頭を抱えるように髪をクシャリと乱してから改めてミケをチラリと見下ろし。
「お前・・・殴る気なくなるんだよ」
「・・・・・はっ?」
「もの凄ぇ腹立って、『この野郎!』って掴みかかるまでは出来るのに・・・・なんか殴れねぇ」
「だから、それ意味不め__」
「殴られたがってんだよ」
「・・・・・・」
「『殴られたい』そんな顔して・・・いや、違うか、・・・もうとっくに殴られた後みたいな顔してて・・・っ・・ああ、何て言っていいのか分かんねぇ」
『ああっ』と、もどかし気に頭を掻きむしると、ドサリとベッドに雑に座りこんできた伊万里さんが葛藤を逃す様に息を吐く。
ミケとしては思わぬ言葉だったのか、投げられた自分の印象に驚愕で呆けていてその言葉の続きを求めるように座りこんだ伊万里さんに意識の集中。
「・・・・・お前・・攻め込むのは言葉ばっかで・・本気じゃねぇもん」
「・・・・」
「最初からなんか違和感だったんだよ。初っ端から敢えてこっちを苛立たせる態度とか言葉とか口調とか。そういう事して煽るくせに決定的な事はしてこない」
「そんな事ないでしょ?ネックレス盗んで騙してみたり、今だって誘拐して・・・強姦紛いしてたのに?」
ほら、見なよ。
そんな風にベッドに縛られた状態の私を示してミケが笑って見せるのに。