だから何ですか?Ⅱ【Memory】
息が苦しい。
足が辛い。
そう思えど止まった瞬間にきっと自分を殺したくなる。
苦しさで目に涙までも浮かぶのに止まる事をせず、人にぶつかり詰られながらも駆け抜け到着したのは大きな会社の前だ。
「っ・・ここって・・・おいっ、」
ようやく事情を理解したらしい彼が今までとは異なる戸惑いの声を上げ、確認する様に私に視線を動かしたのは何となく気がついていた。
それでもそんな視線などお構いなしに足を進めガラス張りの入り口に向かうと【入社試験】の大きな看板が目に入る。
それを横目に通り過ぎて中に入ると迷いなく受付に駆け寄った。
さすがに・・・浮いた。
全くもって場違いで異物に成りえた自分の姿。
大きな会社のエントランスでまずこんな得体のしれない少女が入り込むことはないんだろう。
スーツ姿の人間の出入りが多い場所で、黒いパーカーワンピをフードまでしっかり被り、前髪は目を覆うほど長い変な女の子。
なんとか笑みをはっつけている受付嬢でさえどこか引きつって私を見つめ。
「何か御用でしょうか?」
そんな言葉を返され満を持して口を開くもそこでまたデジャブだ。
どうやって・・・話すんだった?
「あの・・・どうされました?」
『入社試験を受けたいんです!』
そんな一言が喉元まで込み上げているのに音となって響かない。